メール/メッセージの ”セブン・イレブン” ルール

NHKラジオに「実践ビジネス英語」というラジオ講座があって、時々ブランクがありつつも聴き続けているのですが、先日この講座の英文のテーマとして、効率的に(生産性を高めて)メールを使う、というのがありました。

すでに、特にスタートアップ企業とのやりとりでは、普段のやり取りの主役はもっぱらメッセンジャーサービスで、改まった時だけ(たとえば、初めてのお取引先とのやりとりなどは)メール、といった感じです。言ってみれば、郵便を出すような感じでメールが使われている。従来型の企業で、一定以上の役職者の人事異動や組織変更の時に上質な紙に(縦書きで)ごあいさつ文を印刷し、筆耕した封筒でお出しする感覚にちょっと近いかもしれません。

その意味では、メールだけでなくメッセージのやり取りもそうですが、際限なくやるのではなく、少なくても相手がオフの時間には送らないようにし、自分もメールやメッセージの送受信にあてる時間を限定し集中させることで、プライベートをお互いに尊重し、生産性も高めよう、という動きがある、というのが主旨でした。

90年代半ばのビジネス現場でのメール導入初期には、まだ”上司たち”がメールを使っていなかった(使えていなかった)こともあり、その優越感も手伝ってメールを使える若手同士で昼夜を問わずやり取りをしていたのを思い出しますが、もはやそれも20年以上前のこと。

自分が年齢を重ねたこともありイレギュラーな時間帯や休日に(年長者が)送信することで相手に負担(特に心理的なもの)をかけるのもよくないし、独立したこともあって、ますます時間の有効活用が課題という認識もあり、自分としても、なるべくメールやメッセージのやり取りを平日のビジネスアワーに限定し始めています。できれば、メールチェックはデスクでは1日に3回くらいに集中して行い、あとは移動中にモバイルで、というくらいに出来れば理想と思ってはいるのですが。

とはいえ、書くのに時間がかかる内容もあるので、最近は深夜や休日に書いたものは下書きとして保存しておいて、平日の朝を迎えたところで送信、というのを心掛けつつあります。

折しも働き方改革とか生産性向上が叫ばれるご時世でもあり、メールやメッセージは、緊急対応などを除いて平日朝7時から夜はどんなに遅くても11時まで、この ”セブンイレブン” ルールを徐々にでも導入し、将来的には完全に守れるようにしたいと思っています。

ところで、このテーマもそうですが、アメリカのビジネス界の日常的な風景というか、ニュースにはならないような最新の”空気”が感じられる「実践ビジネス英語」の教材は、単に英語のスキルアップにとどまらず興味深い内容が含まれていたりしますので、ご興味があればテキストの和訳を読むだけでもおすすめです。

人重視と役職重視

営業部門に属していた頃の年中行事のひとつに、取引先名簿のメンテナンスがありました。お取引先の人事異動や組織変更を名簿に反映させるもので、この更新をもとに、年賀状や昨今は大変少なくなりましたが中元歳暮といった時候の贈り物の手配が行われるという仕組みです。

このメンテナンスには大きく2つの基準があり、ひとつは「役職重視」もうひとつが「人重視」と呼ばれていました。前者は、役職を固定してそのポジションにある人が変わると人名を書き換えていくもの。後者は、人名を固定し、その人の役職が変わるとそれを書き換えていくものです。

どちらの基準で更新するかは、部署内のベテラン(役職者や年長者、あるいは長年担当している人)に確認しながら行われていたのですが、圧倒的に「役職重視」の方が多かったように記憶しています。「人重視」で、役職がどうなろうとも名簿上に名前が残り続ける人は圧倒的に少ない。それが、名簿のメンテナンスにとどまらず、日本企業のビジネスパーソン一般の標準的なおつきあいの原理なのだなぁ、ということを、今になって改めて感じます。異動があるとドラスティックなまでにあっさりとそれまで日々連絡を取っていた関係先の方々とのお付き合いが止まってしまう、というケースもたくさん見てきました。

一方で、海外のビジネスパーソンの場合はむしろ「人重視」の行動をとる人が多いように感じます。あるとき、親しくなりつつあった海外企業の方から、その企業が関係するカンファレンスへの参加の打診があり、自分では役不足と思って上司に参加を検討してもらおうと思うと返答したところ、「招待するのはオマエであって、お前の上司ではない。」とキッパリと言われたことがありました。結局この時は調整がつかず参加を見送ったのですが、その後も同じようなことがありましたので、海外とビジネスされる方においては、この点は留意しておいた方がよいと思います。

海外企業(と一括りにするするのはやや乱暴かもしれませんが)の場合、日本とは違って転職もごく当たり前にあり、新任者と前任者が同じ会社の先輩後輩の関係であることが多い日本とは異なりますから、役職重視の考え方ではいつまでも人的な関係が構築できないままになりかねませんので、こうした人重視のやり方が合理的ということもあるのでしょう。

たまたま「定年後」という定年後を扱った本を読んだ中で、退職して予想以上にぷっつりと勤め先とのご縁が切れ、自分の名前を呼んでもらえる機会は病院に行った時くらい、というエピソードが紹介されていて、取引先名簿のメンテナンスは役職重視が原則だったことを思い出したのでした。これから日本の働き方が変わっていくとき、名簿はともかく、一人のビジネスパーソンとしてのお付き合いはおのずと役職重視から人重視に変わっていくように思いますし、そうでなければ変化に対応していくのは難しいのではないか、と感じます。新しい事業を作ったり、あるいは新たに会社を興し仕事を作る、という場合を考えても、大企業の子会社であるなら別かもしれませんが、人重視のつながりがないと、なかなか難しいのでは、というのが実感です。

自分の場合、かつてのお取引先やあるいは同じ職場だった方々と「人重視」のお付き合いを頂いているケースが多く、在職中や退職時に気にかけてご連絡を頂いたり、また独立してからの仕事も、こうしたつながりから頂いていることを思うと、改めてその有り難さを噛みしめる日々です。

 

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