台北での IISC Forum「物聯網晶片化整合服務新創國際論壇」で講演

仕事の性質上、普段の業務内容を公表できることがなかなかなく、珍しくそういう機会に恵まれましたので、近況報告を兼ねまして。

2018年10月11日に台北で開催されたIISC Forum「物聯網晶片化整合服務新創國際論壇」で講演をさせて頂きました。TAITRONICSというエレクトロニクス関連の展示会と併催する形でした。

当日のプログラムはこちらに。

 

 

演題は「IoTスタートアップにとってのボトルネックとその克服法」。

当日の概要は、ご興味ありましたらリンク先の記事(中文)をweb翻訳等を活用して読んで頂ければと思いますが(記者さん、とてもよくまとめてくださっていると思いました)、次の主力商品を真剣に探そうという台湾の半導体業界と、それをバックアップする国の姿勢がひしひしと感じられたフォーラム(論壇)でした。終了後の質疑応答も、制限時間いっぱいまで挙手をいただけ、厳しいご意見もありましたが、それも含めてご関心を寄せて頂いたことを大変ありがたく思っています。ご参加の皆様に、多少なりともお持ち帰り頂く価値のあるお話になっていたなら、曲がりなりにもお役目を果たせたかな、と思っています。

講演に使ったスライドは、ご参考までにこちらに載せておきます。

VIVA Technology, TOA, Computex/Innovex, IFA, Innotransはじめ、ここしばらくで見てきたこと聴いてきたこと感じたことを、スライドにも口頭での発表にも質疑への応答にも盛り込みましたので、それなりにオリジナルな視点で構成出来たのでは、と思っていますが、評価するのは聴き手ですので。主催者からは、ポジティブな反応だったとお聞きしているのですが、ネガティブなコメントも含めて、お聞かせ頂けるようにお願いしているところです。

拙い内容に拙い英語での講演であったかと思いますが、それはともかくとしても、だらしない格好で、年寄りくさいし、身長も低いし、どうにかならんのか、と写真をみた家人に叱責されてしまいました。確かにその通りで、身長だけは如何ともし難いですが(シークレットブーツ?)、もう少し見てくれだけでも改善しなければ、と反省。

一層精進してまいります。

>> 工研院今辦論壇 率專家為物聯網新創公司找方向 (聯合新聞網)

3週間のworkationの試みを終えて

 

Workationという言葉、そろそろ1度は目にした耳にした、という方が多くなってきているのではないでしょうか。

work+vacationで、workation。働きながらバケーションを楽しむ、あるいは、休みながら働く、ということ。まだ普通の会社では1日単位の「インプットホリデー」といった制度がようやく出来始めている程度なので、独立し(て起業し)た立場ならではのことをしよう、ということで3 週間、ドイツを中心に欧州に滞在しながらのworkation にトライしてみました。

もともとは、2年に1回開催されるモビリティ関連の展示会Innotransが今年開催されるのと、例年開催されるIFAがいずれも9月のベルリンであることから、その間にあるベルリンマラソンにも参加して、それ以外の期間は現地の友人が部屋を貸してくれるというので、そこにお邪魔しながら家族も呼んだりして、vacationを中心に組み立ててこれを夏休みにしようと思っていたのが昨年末の頃の構想。

しかし、ベルリンマラソンの抽選には落選し(結果的に、偶然にも参加権付きの現地ツアーが見つかったので、それで走りました)、他にも3つの展示会やカンファレンス、視察への参加のお誘いをいただいたりなど、直前まで予定が変わり続け、気がつけば、ベルリンマラソン以外はほとんどvacationの要素がない、という「出張」に変わってしまった、というのが実態でした。

とはいえ、普段とは異なる環境で多くの時間を一人で過ごしたことは、時間をとってさまざまなことをじっくり考えることが出来たと同時にリフレッシュにつながりましたし、一方、カンファレンス・展示会などではご一緒させていただいた方々と有意義な会話やディスカッションを得られたことは単なるインプットを超えて刺激的なものでした。

自分への備忘も兼ねて今回のスケジュール概要を記します。

9/3 往路・日本発(台北で某案件(1) 打合せを経て欧州へ)
9/4-5 IFA(ベルリン)
9/7-10 Ars Electronica(リンツ・オーストリア)
9/12-13 DMEXCO (ケルン)
9/14 某案件(2) 打合せ
9/15-16 ベルリンマラソン(前日EXPO含む)(ベルリン)
9/18-20 Innotrans(ベルリン)
9/21-22 某案件(3) 視察(ストックホルム・スゥエーデン)
9/23-24 復路・日本着

ということで、ここまで見事にスケジュールが埋まるとは、という感じです。移動も仕事関連の予定も全くなかった日は、9/17の1日だけでした。このほか、ベルリンマラソンを別として7回、滞在地を朝に走ることも取り入れ、滞在中の心身のリフレッシュと街の様子を知ることに大いに役にたちました。

期間中の土日よりもフリーの日がはるかに少ないので「これじゃworkationじゃなくてworkだよね」と話したら、勤め人であるドイツ人の友人から「でも、やらされ仕事はゼロでしょう?ならWorkationでしょ。」と言われて、ドイツ人と言えどもサラリーマンとしてのストレスはあるのだな、と思ったりしました(当たり前ではありますが)。

参加した展示会・カンファレンスのジャンルが雑食的に多岐にわたるので、個別の話題はひとまず置くとして、3週間を通しての感想は、

「欧州人は、この先の社会の変化を見極めようとして、頭を使って、議論して、考えている。日本人は考えているだろうか?」

ということ。

これは6月のベルリンでのTOAに参加した時にも思ったことですが、場合によると数百年単位での歴史の節目になるかもしれない、そういう時代や社会の変わり目と思われる今という時を、じっくりと観察して、新しいルールをどう作っていくか、ということを(少なくても一部の)欧州人たちは考えている、それを強く感じます。

例えばGoogleが欧州でなにをしようとしているか、というテーマのセッションがDMEXCOでありましたが、1500人以上入れると思われる会場は立ち見が出るほどの満員でした。また、同じくDMEXCOでは、デジタルマーケティングとの関係がまだ密接とは認識されていないのでは、と思われるブロックチェーン関連のセッションも多数開催され、新しくやってくる技術やそれを活用する会社に対して、それをいわば「異物」として、しっかりと認識し、特性や意図などを把握した上で、どう咀嚼するのか、という態度を感じます。

また、Ars Electronicaでは、人体の科学的解明が進んで、生命の神秘がもはや神秘ではなくなろうとし、AIが人体を越えようとしている科学の時代の行き着く先にあるもの、というテーマを、アートがどのように捉えそれを社会に発信するか、という意識を感じました。

いずれも、社会に起きていること、起きようとしていることを俯瞰し把握した上で、ものごとの本質を捉え直し、そこからあるべき姿を見出し、次の時代に向けての方向性を定める、大きな意味での「ルール」を作っていく、という動きの中にある、と強く感じます。

ちょうど昨年ルターの宗教改革から500年だったのですが、さすがに彼ら欧州人はルターの末裔たちなのだな、と思いました(ちなみにルターはドイツ人です)。

翻って、これらの展示会等に出展・参加していた日本企業からは、総じて、そうした思考、あるいは新しい時代への思索、といったものは、残念ながら感じることは出来ませんでした。

別な言い方をすれば、ルール作りに参加する、という意思が感じられませんでした。

もちろん、日本人の長所は、ルールを作るところにはなく、決められたルールに従ってうまくやることだ、ということなのかもしれないし、そうであるならそれはそれで良いのかもしれません。

ただ、従うにしても、いかにしてルールが作られ、その背景の思想はどのようになっているか、ルールが作られていく現場に居合わせておく方が有利ではないか、と個人的には思うのですが、どうも、そういうことでもないようなのです。

もちろん、多数の出展があった中国の企業にもそうした意思は感じないのですが、そのぶん彼らは、かつての日本企業を彷彿とさせるように、新しい技術を積極的に取り入れた製品のプレゼンテーションをし、積極性とスピード感において、日本企業をはるかに抜き去っています。

「日本の鉄道技術(新幹線)の海外への売り込みが思うようではない一因は、(交通に関する)哲学・思想がないからではないか。」という意見を聞いた時には、ひょっとするとそうかもしれない、と思わずにはいられませんでした。

テクノロジーが社会を変える、それも劇的なまでに、という時代であるからこそ、テクノロジーに目を向けることは大切ですが、それ以上に、そのテクノロジーがどのように社会に実装されていくべきなのか、という思索や本質に立ち戻った議論、あるいは哲学といったものが重要になっているのではないか。

20世紀後半において、日本と同様に敗戦国から出発して技術(製造業)で社会を立て直したドイツで、そのような動きを感じながら、日本の今とこれからについて、思うところの多い3週間でした。

TOA17(ベルリン)に行ってきました

ベルリンで開催されたTOA、Tech Open Air に参加してきました。今年で6回目ながら、なかなか行く機会に恵まれず、今回が初めての参加。

ベルリンの郊外の会場で、7/12,13の2日間にわたって、会場内の7か所ほどの講演会場でそれぞれ10分~20分程度トークセッションが朝から夕方まで続いていくというスタイルのメインイベント。展示的なものもありますが、非常に限られていますし、スタートアップ向けのプログラムの説明・相談会的なブースもあり、写真に撮ればわかる、といったものは非常に少ない印象。これに加えて、ベルリン市内の各地で、メインイベントの時間帯を避けた7/11~14の期間に開催されるサテライトイベントがあります。この2つで構成されるのがTOAの全体像。サテライトイベントは原則無料ですが、メインイベントは購入時期や参加内容によって異なるものの、最低でも3万円程度のチケットを購入しなければ聞くことが出来ません。まぁ、欧州の主要なコンベンションであれば、特に驚くような値段ではありませんが、日本の展示会等の価格の相場からすると、高いと感じるかもしれません。

写真にとればわかるという展示イベントではなく、延々と続くトークがメインディッシュ。メインイベントのセッションはすべて英語でした(サテライトイベントによってはドイツ語で実施されているものもありましたが)。この場で有名企業の特別な発表があるわけでもなく、トークセッションの会場が大小7つほどあるうえ、開始終了の時間がそろっているわけではない、という状況ですので、自分が選んだセッションを聴くだけでTOAの全体をつかんだ、とはなりません。また、小さな会場だと人があふれて入れない、ということも実際に何度か経験しました。その意味で、誰一人として同じTOA体験はない、ということだし、ネットで取り上げにくいイベントだろうなぁ、と。ことTOAに関しては「参加しなくてもネットを見れば書いてある」という状況とは言い難いです。

 

実際、TOAはなかなかニュースになりません。日本語でヒットするのは、下記の記事くらいでしょうか。これをTOAの記事というのかどうか、という内容ではありますが、写真付きで軽く読み流せるもの、となると、こうするしかないのだろな、と。

 

味覚で楽しむ「Tech Open Air」:青空のもとで味わったトラックフード7選

https://wired.jp/2017/07/15/tech-open-air-food/

 

東京でTOAを、という動きもあるようですが、ベルリンのTOAのスタイルのまま持ってきても、話題性の点ではなかなか難しいのかも、と感じたところです。

 

ある人に言わせれば、TOAは参加者が増え、スピーカーと直接講演後にコンタクトをとるといったこともやりにくくなったいま、TOAに参加するよりも、登壇者が他所で行ったスピーチをYoutubeででも探して観れば十分ではないか、と。

それも一理ありますが、私にとっては、普段なかなかまとめて情報がとりにくい欧州のスタートアップ関連動向に関する情報のシャワーを密度濃く浴びるいい機会だったし、自分のお得意様や自分自身にとってどのセッションが有益そうかを考えて参加セッションを選び、メモを取りながら聴いて、あとからメモを見直したり講演内容を思い出したりしながら、TOAの講演に限らない複数の断片的な情報を編みつつ、今後の「柱となる流れ」を見出していく、というのは、ちょっとしたゲームの要素もあり楽しめるものでした。また、しばらく欧州事情から遠ざかっていた自分にとっては、よい「リハビリ」にもなったように思います。

せっかくお金と時間を使って参加してきたものですので、自分なりに見出した「柱となる流れ」の分析結果と活かし方については、弊社の各お客様ごとにカスタマイズしながら順次リポートさせていただきます。(リポート後に少し時間を置いて、有料リポートとして一部公開するかもしれませんが、そこはまだ未定です。)

数社の日本企業の人たちと会場で会いましたが、このようなイベントに参加できるよう、参加者の方々が上司を説得された労力・テクニック、あるいは部下を送り出した上司の方々の度量といったものに、改めて敬意を感じたところです。

もし、日本企業の方で来年のTOAへの参加を考えられているなら、今年のスタイルの実施である場合は、英語を聞き取れる社員さん複数名での参加がおすすめかと思います。手分けして異なるセッションに参加し、事後にその情報を集約して「流れ」を見出せるなら、それは次の動きを占う手掛かりになるはず、と思っています。

ともあれ、夜も21時くらいまで明るいこの時期のベルリンで、終了後に、その日に自分が参加したセッションのことや感じたことなどをツマミに(もちろん、ソーセージも)同僚や会場で知り合った人などとビールなど飲むのは、非常に贅沢な時間になるのではないか、と思いました。